◆Jリーグ◆鹿島は日本のアトレティコ。石井監督はシメオネだ by 杉山茂樹

⇒ブラジルカラーから大転換。鹿島は日本のアトレティコ。石井監督はシメオネだ(Yahoo!)
熱戦度、接戦度ともにハイレベル。急傾斜で知られる吹田スタジアムの良好な眺望と相まって、天皇杯決勝、鹿島対川崎は目の離せない好勝負になった。日本の国内サッカー史上ナンバーワンの試合だった可能性さえある。
鹿島はこの優勝で、Jリーグのクラブとして通算19冠を達成した。見出しに適したエピソードながら、クラブの伝統話を全面に優勝ストーリーを展開すれば、現在の魅力を伝える絶対量が減る。平凡な、ありきたりの優勝話になるどころか、的外れになりかねない。ブラジルに傾倒した過去の優勝と、今回の優勝とは、決定的に違うのだ。
正面からキチッと向き合わないと、日本サッカー界にとって損失に繋がる、価値の高い優勝だと思う。
この天皇杯を史上最高のレベルの試合に押し上げた最大の要因は、鹿島が披露した独得のサッカーにある。Jリーグ優勝、クラブW杯準優勝、そして今回の天皇杯。もし僕が海外在住者で、鹿島の試合を初めて観戦したなら、こう呟いていたと思う。
「このチームの監督って誰?」
監督の存在が偲ばれるサッカー。石井正忠監督の崇高な理念と、その理に叶った指導が、隅々まで行き届いた規律正しいサッカー。
ハイライトとなったクラブW杯決勝、対レアル・マドリーを観戦しながら想起したのはマドリーダービーだ。13-14、15-16のチャンピオンズリーグ決勝でR・マドリーと欧州一を懸けて争った関係にもあるアトレティコ・マドリーの姿だ。
…(中略)…
だが、概して日本は、川崎的なパスサッカーを好む。決まれば鮮やかだが、決まらなければ危険。決まる可能性と決まらない可能性を比べれば、決まらない可能性の方が遙かに高いリスクに溢れたパス回しを、だ。
そうした日本サッカーの従来の嗜好に、正面から向き合っているのが鹿島だ。番狂わせを許しやすいサッカーから、番狂わせを起こすサッカーに転じようとするなら、一見の価値があるのはこちら。アトレティコ的な石井監督のサッカーだ。風貌は全く違うが、彼こそが日本のシメオネだ。
番狂わせを起こしたい日本の立ち位置との相性も抜群にいい。語りたくなる要素がビッシリ詰まった鹿島の優勝。日本における「正しいサッカーの教科書」といっても言い過ぎではない。
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